823個の金型を無償保管させる悪質手口
令和7年7月15日、電子部品大手のSMK株式会社(証券コード:6798)が公正取引委員会から下請法違反で勧告を受けました。これは典型的な下請けイジメの事例です。
同社は下請事業者65社に対し、合計823個もの金型を無償で保管させていました。しかも、長期間にわたってその金型を使った部品の発注すらしていません。完全に下請けを倉庫代わりに使っていたのです。
SMK株式会社とは
SMK株式会社は1925年創業の老舗電子部品メーカーです。資本金約79.96億円、東証プライム上場(6798)の大企業です。コネクタやリモコン、タッチパネルなどを製造し、特に車載向けに注力しています。
- 本社:東京都品川区戸越
- 従業員数:連結約3,985名(2025年3月時点)
- 売上高:480.51億円(2025年3月期連結)
これだけの規模の企業が、下請けを金型置き場扱いしていたのですから呆れてしまいます。
悪質な手口の詳細
公正取引委員会の調査で判明した事実は以下の通りです:
- 対象下請事業者:65社
- 押し付けた金型数:823個
- 違反内容:下請法第4条第2項第3号違反(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)
要するに、SMKは自分の金型を下請けに預けっぱなしにして、保管料も払わず、発注もしないという、下請けにとって何のメリットもない一方的な関係を続けていました。
公正取引委員会が求めた当然の措置
公正取引委員会はSMKに以下を要求しました:
- 速やかな違反行為の是正
- 再発防止のための社内体制整備
- 役員・従業員への周知徹底
- 取引先下請事業者への通知
- 公正取引委員会への実施状況報告
当たり前の内容ですが、これすらできていなかったのがSMKの実態です。
SMKの「お詫び」コメント
勧告を受けたSMKは7月15日付でプレスリリースを発表しました。「公正取引委員会からの勧告を真摯に受け止め、再発防止と法令遵守の徹底に努めてまいる所存でございます」との定型文コメントです。
「真摯に受け止める」だけで済む問題ではありません。65社もの下請事業者が迷惑を被ったのですから、しっかりとした対応と説明責任を果たすべきです。
転職サイトでの内部事情
SMKの内部事情について、転職サイトの口コミを調べてみると興味深い実態が見えてきます。
OpenWorkでは「会社の業績が悪い」「40代、50代で管理職になれないと収入的には厳しい」といった厳しい評価が見られます。また「待遇面の改善のため」退職を考える社員もいるようで、社内環境に課題を抱えている可能性があります。
業績不振と待遇の悪さが、今回のような下請けへの負担転嫁に繋がっているのではないでしょうか。
過去の問題は?
今回の調査では、SMKの過去の大きな不祥事や問題は確認できませんでした。しかし、それが今回の行為を正当化する理由にはなりません。
むしろ、これまで表面化していなかっただけで、下請けに対する不当な扱いが常態化していた可能性もあります。公正取引委員会の調査が入らなければ、このような行為が続いていたかもしれません。
下請けイジメは許されません
今回のSMKの事例は、大企業による典型的な下請けイジメです。
- 金型を下請けに預けっぱなし
- 保管料は無償
- 発注もしない
- 下請けは断れない立場
これは単なる法律違反ではなく、弱い立場の下請け事業者を食い物にする行為です。
SMKに求められる真の対応
SMK株式会社には以下が求められます:
- 被害を受けた65社への謝罪と補償
- 社内コンプライアンス体制の根本的見直し
- 下請け取引の全面的な点検
- 再発防止策の具体的実施
「真摯に受け止める」という言葉だけでなく、行動で示すことが重要です。
下請法は弱い立場の事業者を守るための重要な法律です。大企業が法律を軽視し、下請けを都合よく利用することは絶対に許されません。
SMKには今回の勧告を機に、真のパートナーシップに基づく健全な取引関係の構築を強く求めます。