また一つ、下請けイジメ企業が公正取引委員会の勧告を受けることになりました。名古屋市中区に本社を置くいづみ工業株式会社(代表取締役:山口智也)が、下請事業者に対して金型と治具の無償保管を強制していたとして、令和7年7月16日付で下請法違反の勧告を受けました。
この記事のポイント
・いづみ工業が9社の下請事業者に金型1,570個を無償保管させる
・期間は令和5年10月から令和7年4月まで約1年7ヶ月間
・被害総額は580万7,447円に上る
・同社は既に全額を下請事業者に支払い済み
いづみ工業株式会社とは何者でしょうか?
会社概要
社名:いづみ工業株式会社
設立:1945年(昭和20年)
資本金:2,000万円
本社:愛知県名古屋市中区
工場:群馬県太田市強戸町162-14
事業内容:自動車用小物プレス部品の製造・販売
主要取引先:SUBARU等の自動車メーカー
同社の公式サイトによれば、創業から80年近い歴史を持つ老舗のプレス加工メーカーです。「顧客のニーズにスピーディーに対応し、技術と仕事の質を高め、トップクラスの品質の商品を提供」と謳っていますが、今回の件でその企業姿勢に大きな疑問符が付くことになりました。
悪質な金型無償保管強制の実態
公正取引委員会の発表によると、いづみ工業は令和5年10月1日から令和7年4月30日まで約1年7ヶ月間にわたり、製造委託が終了した自社所有の金型および治具合計1,570個を、9社の下請事業者に無償で保管させていました。
これは下請法第4条第2項第3号「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に明確に違反する行為です。簡単に言えば、「もう使わない金型だけど、タダで倉庫代わりに保管しといて」と下請事業者に押し付けた、典型的な下請けイジメです。
特に悪質なのは、同社が「大量に発注する時期を終えた後」に無償保管を強制していた点です。つまり、美味しい仕事が終わったら、今度は面倒な保管作業を押し付けるという、下請事業者を都合よく利用する典型的なパターンです。
被害総額は580万円超え
今回の無償保管強制による被害総額は580万7,447円に達しました。1,570個の金型のうち318個は既に回収されているものの、残りの1,252個については長期間にわたって下請事業者が保管費用を負担させられていた計算になります。
なお、いづみ工業は勧告を受けて、全額を下請事業者に既に支払ったとのことですが、これは当然の措置です。むしろ問題は、公正取引委員会の調査が入るまで、このような行為を続けていたことです。
過去の不祥事は?
調査した範囲では、いづみ工業株式会社について今回の下請法違反以外に大きく報じられた不祥事の情報は確認できませんでした。しかし、だからといって今回の行為が軽微なものではありません。
むしろ、80年近い歴史を持つ老舗企業が、なぜこのような基本的な法令違反を犯したのかという点は、より深刻な問題と言えるでしょう。
公正取引委員会が求めた再発防止策
今回の勧告により、いづみ工業には以下の措置が求められています:
1. 取締役会での確認・決議
2. 役員および従業員への周知徹底
3. 取引先下請事業者への通知
4. 公正取引委員会への措置報告書の提出
しかし、これらの措置は最低限の対応に過ぎません。本当に重要なのは、なぜこのような違反行為が長期間にわたって続いたのか、その根本原因を徹底的に究明することです。
下請けイジメは許されません
今回のいづみ工業の事例は、日本の製造業に根深く残る「下請けイジメ」の典型例です。大企業や中堅企業が、立場の弱い下請事業者に対して理不尽な要求を押し付ける構造は、いまだに各地で横行しています。
特に自動車産業のような多層的なサプライチェーンを持つ業界では、こうした問題が起きやすいのが現状です。下請事業者は発注元との関係を重視するあまり、不当な要求でも受け入れてしまいがちだからです。
いづみ工業は大企業ではありません。本来弱い立場であるはずの中小企業が、さらに立場の弱い企業を叩く。
世間に蔓延る「お客様は神様」を勘違いした者たちによる悪しき習慣です。
中小企業でも、零細企業でも、下請けや発注先に不当な圧力をかけることは許されません。
下請法違反の罰則
・公正取引委員会による勧告・公表(社会的制裁)
・書面調査等への対応を怠った場合:50万円以下の罰金
・レピュテーションリスク(企業評価の毀損)
・取引先との信頼関係悪化
まとめ:中小企業も下請けいじめの加害者に
いづみ工業の下請法違反勧告は、長年の「下請けいじめ」を改めて示しました。
今回の件からわかるのは、中小企業や零細企業も下請けいじめや不当な圧力をかける場合があるということ。また、取引内容や発注側・受託側の企業規模によっては下請法の適用外となるケースもあります。
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