不二サッシ株式会社に下請法違反勧告、
繰り返される下請けいじめの
悪質な実態

2025年07月28日

2025年7月24日、サッシ製造販売大手「不二サッシ株式会社」に対し、公正取引委員会が下請法違反の勧告を行っいました。
この勧告は、単なる法令違反に留まらず、力を持つ親事業者が弱い立場の下請け事業者に不当な負担を押し付ける「下請けいじめ」の悪質な実態を浮き彫りにするものです。

公取委が指摘した「下請法違反」の悪質な実態

今回、公正取引委員会が指摘した不二サッシの下請法違反は、その手口の悪質性と被害の広範囲さが際立っています。

主な違反行為は以下の2点です。

金型・木型の無償保管の強制(不当な経済上の利益の提供要請)

不二サッシは、部品製造を委託していた46社に金型や木型計7789個を工場などに無償で保管させていました。
これらの金型は不二サッシが所有するものでありながら、部品の発注がない期間も下請け業者に保管費用を負担させていたものです。
これは、下請け事業者のスペースや管理費用を不当に奪う行為であり、下請法の「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に明確に違反します。

中小企業にとって、こうした無償保管は経営を圧迫する大きな負担となります。
公取委の調査で不二サッシ側は金型保管について「保管料を支払うべきだという認識はあったが、請求がなく支払いに至らなかった」と説明しています。
支払うべき認識があったなら「請求書を発行してください」の一言くらい言えると思いますが。

不当な返品と関連費用の押し付け(受領拒否、返品に係る費用負担)

不二サッシは下請け業者20社から納入された窓枠の部品などについて、受け入れ時に品質検査をしていないにもかかわらず、不備があるとして約421万円分を不当に返品していました。
さらに悪質なのは、不備がない部品を交ぜて返品し、無償で仕分け作業をさせた点です。

この不当な返品と費用の押し付けによる被害額は、返品した部品の下請代金相当額、送料、仕分け費用を含め、総額421万6930円にも上ります。
たとえ一部に瑕疵があったとしても、受入検査を怠り、不当な理由で返品し、さらには関連費用まで押し付ける行為は、下請け事業者の正当な利益を著しく害するものです。

これらの行為は、不二サッシが自社の利益を優先し、下請け事業者の立場を利用して不当な要求を繰り返していたことを明確に示しています。46社もの下請け企業が被害を受けていたという事実は、個別の問題ではなく、企業全体に蔓延するコンプライアンス意識の欠如と、下請け事業者への軽視があったと見ざるを得ません。

過去にもあった不祥事と「体質」

不二サッシの不祥事は、今回が初めてではありません。2020年には子会社で不適切会計が発覚し、利益の未計上などが問題となりました。このように組織的な不正を想起させるこうした過去の経緯を鑑みると、今回の下請法違反も、単なる手違いや認識不足で片付けられる問題ではないのかもしれません。

さらに、ネット上の掲示板では「昔のパイオニアにあぐらをかいて殿様商売の結果だな」といった下請けいじめを予感させる厳しい指摘が見受けられます。

企業としてのコンプライアンス意識がどこまで浸透しているのか、下請け企業との関係性において、力を持つ側の「傲慢さ」が蔓延していないか。
今回の勧告は、その体質改善が喫緊の課題であることを改めて突きつけられたと言えるでしょう。

信頼回復への道は険しい

今回の公正取引委員会からの勧告は、不二サッシにとって非常に重いものです。特に、下請け業者という弱い立場にある企業を不当に扱っていたという事実は、企業イメージを大きく損なうことになります。

不二サッシは「勧告で求められた措置を速やかに実行するとともに、コンプライアンスの一層の強化と再発防止に努めていく」と表明しています。
しかし、その言葉が単なる口先だけのものではないことを証明するためには、具体的な改善策の実行はもちろんのこと、長年にわたり培われてきたであろう「企業体質」そのものを見直し、従業員一人ひとりの意識改革を促す地道な努力が不可欠です。

下請け企業との健全な取引関係の構築、そして社会からの信頼回復に向けて、不二サッシの真価が問われるのは、まさにこれからと言えるでしょう。私たちは、このような「下請けいじめ」が二度と繰り返されないよう、その動向を注視していく必要があります。