今度は自動車用ミラー製造の美里工業株式会社が、下請けいじめで公正取引委員会から勧告を受けました。令和7年7月29日に発表されたこの勧告は、同社の悪質な下請法違反行為を明るみに出し、業界に衝撃を与えています。
美里工業株式会社の概要
本社所在地:群馬県藤岡市藤岡1360番地
資本金:3億500万円
事業内容:自動車用ミラー等の製造販売
何が問題だったのか?悪質すぎる2つの違反行為
公正取引委員会の調査により、美里工業は以下の2つの下請法違反行為を行っていたことが判明しました。まさに「下請けいじめ」の典型例と言えるでしょう。
1. 金型の無償保管強要(不当な経済上の利益の提供要請)
最も悪質かつ頻繁に行われるのがこの行為です。美里工業は下請事業者に対し、合計2,029個もの金型・治工具を無償で保管させていました。しかも、その金型を使った製品の発注を長期間行わないにも関わらずです。
なぜこれが問題なのか?
金型の保管には場所代、管理費用、メンテナンス費用など様々なコストがかかります。本来であれば発注元が負担すべき費用を下請事業者に押し付けたのです。これは明らかに下請事業者の利益を不当に害する行為です。
現在までに359個は回収されているものの、まだ1,670個が下請事業者の元に残されており、同社は引き続き回収手続きを進めているとのことです。
回収された分と合わせると約2000個もの金型を無償で保管させていたことになります。これはかなり多い数字です。
2. 不当な返品(261万円分)
美里工業のもう一つの違反行為は、受入検査を行わずに製品を返品したことです。令和5年9月から令和7年3月まで、10名の下請事業者に対し、総額261万3656円分の製品を不当に返品していました。
これは完全に言いがかりです。受入検査もせずに「瑕疵がある」として返品するなど、下請事業者を馬鹿にした行為と言わざるを得ません。
公取委の厳しい勧告内容
公正取引委員会は美里工業に対し、以下の対応を求める勧告を行いました:
- 返品した製品の再引き取りと代金支払い
- 金型保管費用相当額の支払い
- 取締役会での違法行為の確認
- 社内研修の実施と体制整備
- 役員・従業員への周知徹底
- 取引先下請事業者への通知
これは氷山の一角?業界全体の問題
今回の美里工業の件は、製造業界に蔓延する下請けいじめの一例に過ぎません。2023年3月以降、同様の勧告は21件目となっており、問題の深刻さを物語っています。
特に自動車関連業界では、複雑なサプライチェーンを背景に、発注側企業が一方的に有利な立場を悪用するケースが後を絶ちません。美里工業のような中堅企業でも、下請事業者に対しては圧倒的な力を持っているのが現実です。
美里工業も自動車会社から仕事をもらっている、いわば「下請事業者」です。その立場のつらさ、大変さを理解しているにも関わらず、さらに下請けをいじめる結果となっています。
下請けがさらに下請けを叩く、いじめる、不当な圧力をかける。製造業界だけでなく、広く社会に慢延する「お客様は神様」の思い違いが原因ではないでしょうか?
まとめ:もうウンザリ!下請けいじめはいい加減にしろ
美里工業株式会社の今回の下請法違反は、金型の無償保管強要と261万円分の不当返品という、典型的な下請けいじめでした。
同社は「速やかに勧告で求められた措置を実行し、コンプライアンスの一層の強化に努める」とコメントしていますが、こんなことは当たり前の話です。問題は、なぜこのような違法行為が長期間にわたって続けられていたのかということです。
下請事業者は製造業を支える重要なパートナーです。その信頼関係を踏みにじる行為は、結果的に日本の製造業全体の競争力を削ぐことになります。
公正な取引関係の構築は待ったなし。美里工業には真摯な反省と根本的な体制改革を求めます。そして、他の企業も今回の件を教訓として、自社の取引慣行を見直すべきでしょう。
下請けいじめは絶対に許されません。今こそ業界全体でコンプライアンス意識を高め、健全なサプライチェーンを構築する時です。