2024年は多くの下請けいじめ企業が下請法違反や独占禁止法違反で公正取引委員会から勧告を受けました。
そこで2024年に下請けいじめして怒られてしまった企業をまとめてご紹介。
下請けいじめの手口も公開するので、取引の際のご参考にしてください。
令和6年1月23日
屑費というイチャモンで不当な減額を強要した
株式会社メタルテックへの勧告
株式会社メタルテックはボディー骨格部品などを製造する愛知県に本社を置く資本金7億8000万円(2024年1月時点)の大企業。
令和4年5月から令和5年6月までの間、「屑費」という聞いたこともない理由をつけ、下請け業者から総額6193万7555円を不当に減額していました。
不当な減額のための無茶苦茶な言い訳
『屑費(くずひ)』とは
下請け業者が原材料を加工する際に生じる鉄スクラップ(屑)。
「それを下請けが売却すれば利益が出るでしょ?その分安くしてよね。」
といった理屈です。
まさにイチャモン、まさに余計なお世話と言った印象です。
令和6年2月15日
一方的な発注取り消しで下請けをいじめた
王子ネピア株式会社に勧告
王子ネピア株式会社は製紙業界最大手『王子製紙』のグループ会社です。
王子ネピア自体も紙パルプ加工品などの製造販売大手。
本社は東京都中央区銀座。資本金3億5000万円(2024年2月時点)の大企業です。
王子ネピア株式会社は下請け業者に2021年度の終わりまでの期間でマスクの製造を依頼。
発注書を発行していたものの、契約途中の2021年12月に一方的に発注を取り消しました
契約当初の発注数量の約3割程度となる製品の受け取りと支払いを拒否。
これが下請法の『不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止』に違反する行為とされ、公正取引委員会から勧告を受けました。
すでに原材料を仕入れ、人員も手配していた下請けが不憫です。
令和6年2月21日
下請けに無理やり発注させた件で
ダイオーロジスティクス株式会社に勧告
またまた製紙業界のグループ会社から勧告です。
ダイオーロジスティクス株式会社は、製紙業界4位、エリエールでお馴染み大王製紙のグループ会社。
愛媛県四国中央市に本社を置き、資本金は3000万円(2024年2月時点)。売り上げのほとんどを大王製紙グループから請け負っています。
2020年11月以降、大王製紙グループ外からの貨物運送の取引を増やす方針が掲げられたとされるダイオーロジスティクス株式会社。
その解決策が下請け業者がグループ外から請け負った運送業務を無理やりダイオーロジスティクスに再委託させることでした。
この運送業務再委託の強要により下請け業者が被った被害額は6995万円。
公正取引委員会はこうしたダイオーロジスティクスの行為が下請法の『購入・利用強制の禁止』に違反するとして同社を勧告しました。
勧告では実名こそ公表されていませんが、当時の所属や肩書きまで明らかになっています。
令和6年2月28日
40年も無償で金型を保管させた件などで
サンデン株式会社に勧告
サンデン株式会社は自動車の空調システムを製造・販売しています。
群馬県伊勢崎市に本社を置き、資本金は217億4186万9287円(2024年2月時点)、グローバルに展開する大企業です。
サンデン株式会社は下請け業者61社に4220個もの金型を無償で保管させていました。
金型の中には40年以上も保管させ続けたものや、重さが3トンになるものも。
下請け業者が負担した保管費用は1億円以上になる見込みです。
こうした行動が下請法の『不当な経済上の利益の提供要請の禁止』に違反するとして公正取引委員会から勧告を受けました。
令和6年3月7日
総額30億円以上の違法な減額で
日産自動車株式会社に勧告
2024年末にホンダとの経営統合で世間を賑わせた日産自動車株式会社。
2024年3月には公正取引委員会から勧告を受けていました。
日産自動車株式会社は横浜市神奈川区に本社を置く、資本金は2024年3月時点で6058億1373万4035円の言わずと知れた大企業です。
日産自動車株式会社は下請け業者36社に対し、総額30億2367万6843円もの大金を不当に減額させました。
日産自動車株式会社による下請けいじめの手口は『割戻金』。発注した代金から『割戻金』という謎の理屈を用いて差し引かれた金額で代金を支払っていました。
中には10億円以上を勝手に割り引かれた下請け業者もあったそうです。
本当に不憫です。
令和6年3月12日
減額と返品のダブルパンチで
コストコホールセールジャパン株式会社に勧告
会員制で倉庫で買い物でお馴染みコストコが公正取引委員会から勧告を受けました。
コストコホールセールジャパン株式会社は千葉県木更津市に本社を置く資本金95億500万円の大企業です。
コストコはクーポンやセールの値引き額の一部を下請け業者に強制的に負担させていました。
下請け業者に負担させ、減額した金額は総額3350万3828円にのぼり、約2年間続けられていました。
また下請け業者から納品された商品を、品質検査もせずに不良品扱いして返品。下請け業者11社に対して、総額199万8476円分の不当な返品を行っています。
コストコは『下請代金の 減額の禁止』と『返品の禁止』に違反したとして勧告されました。
まさかのダブルパンチです。
令和6年3月15日
過去最多の法令違反で
株式会社ビッグモーターと子会社に勧告
2023年に不祥事で世間を騒がせた株式会社ビッグモーター。今年は子会社の株式会社ビーエムハナテンともども公正取引委員会からの勧告と指導を受けてしまいました。 株式会社ビッグモーター、株式会社ビーエムハナテンともに東京都多摩市に本社を置く、資本金1億円(2024年3月現在)の企業です。
あまりにも多い株式会社ビッグモーターと株式会社ビーエムハナテンの下請法違反。公正取引委員会のサイトでも、他社の勧告の情報と比べ以上に長いページ構成になっています。
株式会社ビッグモーターと株式会社ビーエムハナテンの違反の数々
- アプリや電話で発注。注文書や発注書といった発注書面を準備しない。 - 下請け業者に作業指示書を作らせ、店長が確認印を押すなど、必要項目を満たさない書面の交付。 - 2年間保存しなければいけない書類を保存していない。 - 報告命令を受けている「下請事業者との取引に関する調査」を報告していない。 - 事務処理の遅れにより支払いを遅延させる。 - 請求書が提出されていないことを理由に支払いを遅延させる。 - 支払い期限に銀行がやっていないという理由で一方的に支払いを遅延させる。 - 誤発注して料金を払わない - 遅延利息の不払い - コーティング加工の発注単価を強制的に値下げさせる - 洗車中に車内に水をかけたとイチャモンをつけて車両を買い取らせる - ビッグモーターで車検を受けていない下請け業者の車を出入り禁止にする - ビッグモーターで車検を受けていない下請け業者の車からは駐車料金を徴収する - 悪名高いビッグモーター取扱の損害保険を契約させる - 下請け業者に店舗などの掃除、雑草の除去、展示車両のタイヤへのワックスがけ、販売車両の車内清掃などを無償でやらせる。
とにかく多いです。公正取引委員会によると、これほど多くの法令違反が確認されたことは今までなかったとのこと。
2023年に世間を騒がせた件に加え、前代未聞の下請けいじめ企業ともいえます。
令和6年3月19日
一方的な値引きと支払い遅延で
株式会社Gioに勧告
株式会社Gioは大阪市大阪市西区に本社を置く、資本金3000万円(2024年3月現在)、主な事業は婦人服などの小売業の企業です。
女性服ECサイト『GRL(グレイル)』を運営しています。
株式会社Gioは支払いまでの期日を短縮する代わりに『値引(1.5%)』と称して下請け業者への支払いを減額していました。
また、商品のサンプルが納期に遅れたこと、商品に瑕疵があったことなどを理由に、支払期日を過ぎても下請け業者に代金を支払わず、遅延して代金を支払う際には一方的に減額したそうです。
またファッション業界専門誌WWDによると、株式会社Gioは2015年には模倣品を販売したとして不正競争取締法で逮捕者を出したほか、2016年には法人税計4700万円を脱税したとして大阪国税局に告発されているそうです。
取引には注意が必要かもしれません。
令和6年3月25日
無償での保管&無駄な作業強要で
ニデックテクノモータ株式会社に勧告
ニデックテクノモータ株式会社は、精密小型モータの開発・製造で世界シェア1位のニデック株式会社(旧社名:日本電産株式会社)のグループ会社。
京都市南区に本社を置き、資本金25億(2024年3月現在)、産業用モータの製造販売を行う大企業です。
ニデックテクノモータ株式会社は下請け業者に今後発注が見込めない金型など約600個を無償で保管させていました。
さらには無償で保管させていた金型などの棚卸し作業を年2回行わせるという無駄の境地を下請け業者に強要していました。
日本を代表する大きな企業のグループ会社なので、コンプライアンス意識は高く持って欲しいものです。
令和6年5月22日
2012年に受けた勧告と同じ内容を含む減額で
生活協同組合コープさっぽろに勧告
まさかのコープへの勧告です。生活協同組合コープさっぽろは札幌市西区に本部を置く出資金893億4829万5000円(2024年5月現在)の法人。893億…。
コープによる下請けいじめは意外でした。
コープさっぽろは下請け業者27社に対し、月次リベートやシステム利用料、協賛金年契リベート、達成割戻金、支払通知作成料などを口実に支払い代金を不当に差し引いていました。
減額した金額は、総額2537万4079円です。
コープさっぽろは平成24年(2012年)6月にも月次リベートを口実とする減額の強要で勧告を受けていましたが、再びの勧告となってしまいました。
令和6年6月14日
特売やサンプルを口実に支払い金額を減額し
三井食品工業株式会社に勧告
三井食品工業株式会社は愛知県一宮市に本社を置く、資本金1200万円(2024年月6現在)、漬物を製造販売する企業です。
三井食品工業株式会社は下請け業者に対し特売条件やサンプル使用分などを口実に支払い金額を一方的に減額していました。
6月に勧告を受けたあたりではコーポレートサイト上で謝罪と再発防止に講じる旨のコメントを出していたそうですが、現在はしれっと削除されています。
令和6年6月19日
24,600回も強制的にやり直しさせた件で
大阪シーリング印刷株式会社に勧告
大阪シーリング印刷株式会社は大阪市天王寺区に本社を置く、資本金3億2443万9200円(2024年月6現在)の大企業。
シール、ラベルの製造では大手企業です。
大阪シーリング印刷株式会社は下請け業者であるデザイン会社36社やデザイナーに対して、24,600回も強制的なやり直しをさせていました。
一社あたり平均で約683回も強制的にやり直しさせられたことになります。
えげつない回数です…
令和6年7月5日
不当な返品と金型を無償で保管させたとして
株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメントに勧告
株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメンは、社名から読み取れる通りトヨタ自動車の子会社。
横浜市港北区に本社を置く、資本金17億円、自動車の内外装用の製品を製造・販売する企業です。
株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメンは下請け業者から納品された製品を検品もせずに不良品扱いして返品しました。
不当に返品された製品の総額5427万3356円にものぼります。
また、長期間発注していないにも関わらず、下請け業者に合計664個もの金型を無償で保管させていました。
金型を無償で保管させるのは下請けいじめのよくあるパターンとなっています。
金型を使用して製品を製造する会社は注意が必要ですね。
令和6年9月4日
「こんせんくん」もがっかり
パルシステム生活協同組合連合会に勧告
生協で2件目の勧告です。勧告を受けたのはパルシステム生活協同組合連合会。
東京都新宿区に本部を置く、出資金158億7560万円の法人です。
『こんせんくん』という牛のキャラクターでお馴染みです。
パルシステム生活協同組合連合会はプライベートブランド(PB)の食品の製造を委託していた下請け業者5社に対して、セールなどの値引き分や、商品の保管や運送にかかる費用の一部などの下請け代金を不当に減額していました。
減額分は合わせて約2770万円に上ります。
コープや生協って優しいイメージがありますが、結構下請けいじめするんですね。
令和6年9月26日
お馴染み金型の無償保管で
SANEI株式会社に勧告
SANEI株式会社は大阪市東成区に本社を置く資本金4億3275万7500円の大企業。水栓などの給排水器具メーカーです。
デザイン性に優れた水栓金具などを製造・販売しています。
SANEI株式会社は下請け業者に使う予定のない金型を無償保管させていました。無償保管を強いられた下請け業者は50社にものぼります。
またも金型の無償保管です。
令和6年10月23日
無茶苦茶な取引実態も報道されちゃった
ナイス株式会社に勧告
ナイス株式会社は横浜市鶴見区に本社を置く資本金244億3362万1809円の住宅用資材販売を営む大企業です。
ナイス株式会社は下請け業者や仕入れ先への支払い代金を最大で6%も差し引いていました。
また「リベート」という謎理論で支払い金額を2~3%差し引いていたそうです。
ナイス株式会社の勧告を報道した記事などを確認すると『仕入れ割引が具体的にどのような内容なのか、ナイス側の担当者も把握していなかった(朝日新聞デジタル)』『支払時に代金を差し引く合意があったケースが大半で、同社に違反の認識はなかった(日本経済新聞)』など、無茶苦茶な実態も見られます。
令和6年10月25日
納品完了後にも修正を続けさせた
カバー株式会社に勧告
カバー株式会社は東京都港区に本社を置く、資本金10億315万1189円のVTuberタレント事務所大手。「ホロライブ」運営で有名だそうです。
カバー株式会社はVtuber動画に使用するイラストや2Dまたは3Dモデルの制作を下請け業者に依頼。下請事業者23人に対し合計243回の修正を無償で行わせていました。
制作完了後にも修正を強要するなど、弱い立場の下請け業者に対して無茶な要望を強制していました。
令和6年11月12日
記事作成と写真撮影の買い叩きで
株式会社KADOKAWAと子会社に勧告
株式会社KADOKAWAは東京都千代田区に本社を置く資本金406億2488万6625円(2024年6月現在)の出版大手。
また、出版に限らず映像、ゲーム、ウェブサービス、教育などの事業を展開する総合エンターテインメント企業です。
勧告を受けたのは株式会社KADOKAWAと子会社の株式会社KADOKAWA LifeDesign。
株式会社KADOKAWAは有名な月刊誌「レタスクラブ」の記事作成や写真撮影を委託する下請け業者26者に対し、4月発売号分から一方的な値下げを強要しました。
事前の協議などはなく、最大で39.4%ほど引きされげられたそうです。
令和6年11月21日
こちらは金型と「木型」の無償保管で
住友重機械ハイマテックス株式会社に勧告
住友重機械ハイマテックス株式会社は愛媛県新居浜市に本社を置く、資本金3億1000万円(2024年6月現在)の会社で、創業140年を超える名門企業。戦艦大和と武蔵の建造にも関わっていました。
住友グループの住友重機械工業の子会社です。
住友重機械ハイマテックス株式会社は金型や木型など178個を下請け業者に無償で保管させていました。
金型はよくある下請けいじめのケースですが、今回は「木型」の保管も含まれています。
令和6年11月28日
ドライバーをタダ働きさせた件で
株式会社イトーキに勧告
株式会社イトーキは大阪市中央区に本社を置く資本金72億5170万9456円(2024年6月現在)の大企業。オフィス家具大手です。
株式会社イトーキは下請け業者である数十者の運送業者に対して、繁忙期の時間外労働や契約外の労働への対価を支払っていませんでした。
これまで紹介した金型の無償保管や買い叩きなどを禁止する「下請法違反」ではなく、「独占禁止法第19条」(物流特殊指定)違反での勧告です。
令和6年12月13日
納入業者にタダ働きさせて協賛金を徴収した件で
株式会社ダイゼンに勧告
株式会社ダイゼンは北海道旭川市に本社を置く、北海道でスーパーマーケットの「DZマート」を運営する企業。道内では30店舗も展開しています。
株式会社ダイゼンは新規開店セールや毎年9月の決算セール、毎年12月の歳末セールなどで納入業者から強制的に協賛金を徴収していました。
また、新規開店や改装開店の際に納入業者に商品の陳列や開店の準備作業を無理やり手伝わせていました。
株式会社ダイゼンは下請法ではなく独占禁止法の「優越的地位の濫用」に違反したとされ、公正取引委員会から勧告を受けています。
21の企業や団体が公正取引委員会から勧告を受けました。
中には同じ内容で2度目の勧告を受けた団体や、史上最多の違反数で勧告を受けた企業など、悪質な法人が多く見られます。
公正取引委員会には今後も違反に目を光らせてもらえると心強いです。
下請けいじめの対策は公正取引委員会への報告だけではありません。
もしも下請けいじめを受けたら、客を評価する口コミサイト『ナニサマ』で違反企業の真実を投稿しましょう。
STOP泣き寝入り!新たな下請けいじめの被害者を減らすために、下請けいじめ企業の情報は共有しましょう!