令和7年5月13日、射出成形機メーカー大手の日精樹脂工業株式会社が、公正取引委員会より下請法違反で勧告を受けました。
公正取引委員会の発表によれば、日精樹脂工業に指摘された下請法違反行為は2つ。 親事業者の有利な立場を利用し、弱い立場の下請けに不当に圧力をかけていました。
日精樹脂工業がおこした2つの下請けいじめ
無償で木型の長期保管を強要
1つ目の違反は、おなじみ長期間使用していない木型の保管の強要。
製造業において、木型や金型といった治具の保管には、専門的な管理や適切なスペースが必要であり、それに伴う費用や労力は決して軽視できるものではありません。
本来、親事業者の都合で発生するこれらのコストは、親事業者側が負担すべきもの。
これを下請事業者に一方的に押し付けていたとすれば、それは下請事業者の利益を不当に害する行為であり、下請法が禁止する行為の一つに該当します。
この種の行為が長期にわたって行われていたとすれば、下請事業者の経営に継続的な負担を与えていた可能性も考えられます。
発注取消しに伴う原材料費の支払い拒否:約1,200万円分
2つ目の違反は、日精樹脂工業が発注を取り消した部品について、既に下請事業者が購入済みであった原材料費など約1,200万円に上る費用の支払を拒否した点。
製造業においては、市場の変化や生産計画の見直しにより、発注がキャンセルされることはあり得ます。
しかし、下請事業者が既に原材料を仕入れたり、製造を開始したりしている場合、それによって生じた損害は親事業者が適切に補償すべき責任があります。
このケースでは、多額の費用が下請事業者に転嫁された形となり、下請法の定める「下請代金の減額の禁止」や「不当な給付内容の変更」といった規定に抵触する可能性があります。
1,200万円という金額は、下請事業者にとって決して小さくない損失であり、その事業運営に深刻な影響を与えたことも推測されます。
企業が問われる責任:日精樹脂工業のコンプライアンスと今後の課題
今回の勧告は、日精樹脂工業のコンプライアンス体制、そして企業文化全体に対し、厳しい再評価を促す機会となるでしょう。
過去に日精樹脂工業が公正取引委員会から同様の勧告を受けたという公表事例は確認されていませんが、今回指摘された違反行為が、長期にわたるものであったことや、多額の支払い拒否が含まれていたことを踏まえると、単なる個別の問題としてではなく、組織全体における下請法への理解不足や、公正な取引慣行に対する意識の欠如といった、より根深い課題が潜在している可能性が考えられます。
企業活動において、法令遵守はもちろんのこと、社会的な倫理や公正な取引慣行を守ることは、企業の持続的な成長にとって不可欠な要素です。サプライチェーンの上流に位置する大手企業には、その影響力の大きさに応じた、より高いレベルの責任が求められます。
日精樹脂工業は、今回の勧告を受け、「お取引先様をはじめ関係者の皆様にご迷惑とご心配をおかけし、深くお詫び申し上げます」とコメントし、再発防止に努める意向を表明しています。今後、同社には以下の点において、具体的な対策を講じることが求められます。
Google検索のサジェストにはブラックというキーワードも
Google検索で日精樹脂工業と検索すると、サジェストに「ブラック」というキーワードが出現します。
原因として「ブラック企業かどうか」を調べたい人が多い、就職・転職の口コミサイトでネガティブな話題がある、SNSや掲示板などでブラック企業的な内容が言及された、などの原因が考えられます。
日精樹脂工業には下請けいじめの体質の他にも、企業としての体質に何か問題があるのかもしれません。
信頼回復への道のり
今回の公正取引委員会からの勧告は、日精樹脂工業にとって、企業としての信頼性とブランドイメージに大きな影響を与える出来事です。市場からの信頼を取り戻すためには、一時的な対応ではなく、企業文化全体にわたる真摯な変革と、その継続的な実践が求められます。
日精樹脂工業が今回の勧告を契機として、より強固で倫理的な企業体質を確立し、サプライチェーンにおける公正なパートナーシップの模範となることができるか、その今後の取り組みが注目されます。